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2月18日、当館ではJETRO広州事務所、広州日本商工会とともに、広東省人力資源・社会保障庁と(1)目下の労働力供給状況、(2)労働争議の状況、(3)広東省企業民主管理条例(審議中)等の法整備の状況、(4)給与水準の動向等につき意見交換を行いましたが、その概要は以下のとおりです。
1.労働力の供給状況
当局としても、労働力の供給状況について注視。各地で企業や帰省ラッシュ時の駅でのアンケート調査や労使双方を対象とした座談会を開催する等実態の把握に努めている。その結果、現在の労働市場での需給状況は平穏と認識。
(1)具体的には、春節後の他省から広東入りする出稼ぎ労働者の数は、若干の減少は見られるが例年レベルである。春節前に帰省した出稼ぎ労働者は約910万人(他省からの出稼ぎ全体の約53%)、そして、春節明け直後の現時点で502万人が既に広東入りしている。広東入りした出稼ぎ労働者の内、90%は春節前と同じ職場に戻る者で、今回初めて広東入りするのは2%である。
(2)求人倍率については、春節前1.1倍、春節後1.09倍と大きな変化は見られない。募集の内、製造業が44.8%、以下小売業(11.4%)、ホテル・飲食業(10.7%)、情報通信・ソフト・物流(7.1%)、家庭サービス(6.2%)等の順となっている。技能職の募集は全体の25%である。
現在、広州市で15万人、深セン市で20万人、東莞市で18万人の人手不足となっており、全省では100万人の人手不足となっている状況であるが、これは例年レベル。地域的に珠江デルタ、業種では労働集約型、伝統的製造・サービス業に人手不足が多いのも普段の傾向である。今後の労働力需給関係の状況については、元宵節(2月17日)を過ぎたばかりであり、今後1、2ヶ月の状況を見て判断すべきで、現時点の状況のみで人手不足が深刻と判断すべきではない。
(3)広東省としては、目下、省内農村地域の労働力資源の開発を重視し、農村での調査、技能研修等を通じて農村労働力の転換に努めている。特に農村1家庭に1人は技能職に就けるよう技能向上策を講じている。また、省、市等の行政単位、また、業界や産業毎等、様々な形での就業セミナーを都市と農村で展開、また、ネットも活用して就業情報を広報している。就業セミナーについては、2月から4月にかけて合計1000回行う計画である。また、労働意欲向上のためにも、企業における人としての思いやりのある環境整備、最低賃金の引き上げ等による所得向上策、出稼ぎ労働者の子女教育問題の解決や医療等社会保険整備、都市戸籍への加入制度等を実施している。
(4)給与面でいえば、広州市の343社を対象にした調査の結果、春節明けの給与水準は、前年に比べ10%上昇、内訳では新入社員の給与水準が11%、既存社員の給与水準が9.8%、それぞれ上昇している。東莞市における調査では、春節明けの従業員募集時の平均給与は一般ワーカーが1437元、技能職で2056元となり、5~10%の上昇となっている。
(5)(当方より、労働力の需給はバランスがとれているとの説明であったが、現場では人手不足に直面している企業が少なくないと発言したのに対し、)この点、報道が騒ぎすぎで、また、報道が労働市場において労働者側が現実以上に自身を売り惜しみする状況を生み出し、客観的な状況と乖離した労働力の売り手市場となっている。冷静に見れば総量としては大きな問題はないはずである。
2.労働争議(注)
(注:労働争議は、ストライキを指すものではなく、賃金不払いで訴訟や労働仲裁に訴えたもののを指すものと考えられます。)
(1)広東での労働争議は、2006年頃から増加し、新たに労働契約法、労働仲裁法が施行された08年に増加幅のピーク、09年、10年はほぼ横ばいで、10年の労働争議件数は30万件前後となっている。争議の原因は40%以上が労働報酬、28%が経済補償金、他に解雇や社会保険、福利等である。民営、香港や台湾を含む外資における件数が70%となっているが、日本企業での件数は多くない。地域的には珠江デルタに多い。
(2)労働争議の内、労働仲裁院における労働仲裁により70%が解決しており、政府としても労働仲裁のルール、仕組み、システムの強化に取り組んでいるが、現在は、これに加えて、(労働仲裁に至らずに問題を解決する)調停(中国語:調解)による問題解決を普及させている。具体的には労働保障部門や陳情部門、仲裁部門が中心となり各鎮、街道、産業園区に調停センターを設立し、労働争議を仲裁や訴訟に至る前の段階、現場レベルで解決するようにしていきたい。また、この関係では、企業の中に工会(労働組合)組織も活用して調停センターをつくることも検討すべきと考えている。調停については、成立した場合には、現地の労働保障部門で調停書を作成するが、これは双方の当事者に対して法的拘束力を有するが、強制的に執行する拘束力はなく、これに不服な場合や、これが守られない場合には、仲裁や訴訟の手段に訴えることとなる。
(3)昨年、広東省内で、「労使関係の不調和による事件」(注:先方はあくまでストライキとの表現はせず)が頻発したのには以下の「不適応」があったと考えている。(ア)企業内の収入分配制度が、企業とともに発展することを求める新世代の労働者の要求と不適応を起こしていた。問題の起きた企業では、一般職員と幹部社員の間で20~25倍もの給与格差が存在している。(イ)企業の管理モデルと、文化レベル・権利意識が旧世代より高い新世代労働者の個性との間で不適応を起こしている。労働者を使用するという資本側の立場、意識が強すぎるとも言える。(ウ)また、今の法律と現実の間の不適応があったことも指摘せざるを得ない。労働者による稼働停止(停工)については、現行の法律に規定がなく、当局が処理するに当たって困惑するという一因にもなった。
(4)(当方からの質問に対し、)昨年日系自動車関連企業で労働問題が頻発したのは、この業界の経営状況が良く、給与を引き上げる余裕があったこと、また、自動車関連企業の社員は大卒や技術専門校の卒業生が多く、比較的学歴が高い故に権利意識も強いということが原因としてあげられるかも知れない。いわゆる加工貿易、OEMに従事している労働集約型企業においては、社員の学歴は比較的低く、(個別の労働争議は多いものの)集団での労働問題は多くはない。
(5)(当方より、本年になってからもスト的な労働争議が発生しているが、状況如何と質問したのに対し、)本年については、昨年のように短期間に特定の業界で大規模な労働争議が起きる可能性は低いのではないか。しかし、他国ではストライキが珍しくないように、中国でも労働者による行動は常態化していくのではないか。
(6)(当方より、ストライキの発生は企業の対中進出に影響が出る問題、進出先としてインドやベトナムを検討する企業も出てきている、大規模ストについて政府当局も未然防止に協力いただきたい旨発言したのに対し、)無論、政府としても、そのような状況が発生することは望んでいない。そのために労働環境の改善につき進めていきたいと考えている。日本企業については一般的にコンプライアンスの面で優れているが、今後、法遵守だけでなく、中国人職員との意思疎通を図り、企業と職員の共同発展という意識を強くして欲しい。昨年の大規模労働争議については、社内での給与格差だけでなく、中国人職員に対する人的管理面で問題があったケースもあった。
3.広東省企業民主管理条例等関連の法整備
(1)目下、政府としては、企業と労働者の関係を積極的に調整する形で対応しており、昨年第4四半期以降、大規模な労働争議は大幅に減少し、全体の状況は安定していると認識している。また、労働環境の整備、そのための政策についても宣伝し、模範的企業による講演や、模範企業の表彰(日系企業も含まれている由)等を通じて政策の普及に努めている。立法面でも新たな状況に対応する立法作業を進めている。
(2)広東省企業民主管理条例については、社会各界から対立するものも含め様々な意見が提出され、現在、省人民代表会議、総工会を中心に関係部門で内容を検討中である。なお、企業民主管理条例のパブリックコメントに先だって人力資源社会保障庁でパブリックコメントを開始した広東省給与集団協議条令については、社会保障当局として給与集団協議に特化した細かな規定が必要との問題意識(企業民主管理条例は範囲が広く、給与集団協議についても細部の規定が不足しているとの問題意識)があり、制定を企画したものであるが、省人民代表会議が企業民主管理条例だけでなく、広東省給与集団協議条令も必要と考えるかは現時点では分からない。
4.賃金水準
(1)広東省では05年から09年の間に在職職員平均給与が年平均10.8%向上、2010年第3期の時点で月平均3165元となっている。09年時点での業界別年間給与は金融が91652元、情報通信・ソフト等産業が62264元、電力ガスが54803元、製造業が26991元、建築が25843元、住宅サービス・飲食が22352元、農林牧畜業が14533元と業界別に差がある状況となっている。
(2)政府としては、企業の給与については、市場による調整、企業の自主判断、報酬決定過程への職員側の民主的参画、政府による監視・指導・コントロールにより決められるべきと考えている。この内、今後は、特に給与集団協議等を通じて公正、透明性のある形で企業内部の分配がされるよう職員側の民主的参画が必要であると考えている。また、政府によるコントロールとしては、最低賃金の引き上げ、その厳格な執行を通じて、低所得者の生活を保障していく。給与の集団協議については、工会(労働組合)が職員の代表として役割を発揮することを重視すべきと考えている。
(3)政府としては、地区毎の最低賃金制度を重視し、給与水準を適正な方向に誘導していくこととしているが、併せて業界毎の給与水準も労働力市場価格帯として公表し、活用している。地域によっても異なるが、業界や職種、職位によって細かく分類し、例えば深センにおいては200以上に分類している。(当方より、各地で分類した給与状況をまとめて公表するサイトや、省政府がまとめて公表する等の形で情報提供はしていないのかと質問したのに対し、)目下、省人力資源・社会保障庁でまとめて数字を公表することを年内を目処に検討しているが、現状ではまとめて整理した情報はない。詳細は各地の担当部門に問い合わせて欲しい。
(了)
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