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新型インフルエンザ等感染症対策講演会を実施しました


平成20年12月15日
在広州日本国総領事館

12月4日、当館と広州日本商工会の共催により、在上海日本国総領事館の平松和子医務官を講師に招き「新型インフルエンザ等感染症対策講演会」を開催し、約80人の皆様にご参加いただきました。
当日の講演概要を取りまとめましたので、新型インフルエンザ対策への理解を深めるためにも、ご一読いただければと思います。
資料につきましては、こちら(http://www.guangzhou.cn.emb-japan.go.jp/basicinfo/hirai.pdf)をご覧下さい。

1.講演会の概要
(1)インフルエンザの分類
あらゆる哺乳類及び鳥類はインフルエンザに罹る。インフルエンザにもさまざまな種類があり、通常の致死率が高くないタイプもあれば、高い死亡率となる「高病原性」タイプもある。2つ以上の国で発生し、全世界的に流行する状態を「パンデミック」と呼ぶ。

(2) 新型インフルエンザ(H5N1型)
インフルエンザの亜型はH型及びN型の分類があり、H型は1から16、N型は1から9までのタイプがあり、この組み合わせで理論的には154通りに分類される。いわゆる今回の新型インフルエンザは、このうちの「H5N1型」であり、鳥が持つインフルエンザ。ウイルス菌の1個の大きさは、1センチの1万分の一。ウイルスはそれ自身では活動できず、他の細胞にとりついて養分を吸収することによって活動する。人インフルエンザの特徴は咳が出ることだが、鳥インフルエンザは咳が出ないが下痢を引き起こし、高病原性インフルエンザに分類される。

(3)季節インフルエンザ
通常、冬に流行するインフルエンザは「季節インフルエンザ」と呼ばれ、季節インフルエンザが流行すると、学級閉鎖等が行われる。現在では高性能の簡易診断キットが診断に用いられており、診断が正確で容易となっているほか、ワクチンが普及している。インフルエンザの多くは良性といわれ、しっかり休養を取って栄養補給を行えば治癒するが、現在でも小児・高齢者を中心に、年間1万人程度が季節インフルエンザにより死亡している。なお、新型インフルエンザの簡易診断キットはアメリカで既に開発されているが、まだ日本での実用化には至っていない。

(4)過去の大流行
20世紀は「インフルエンザとの闘いの世紀」とも言われ、1918年に「スペイン風邪」が、1957年には「アジア風邪」が、1968年には「香港風邪」が大流行。アジア風邪の大流行の後、アメリカでは全ての児童生徒にうがいを行わせ始めた。
スペイン風邪のインフルエンザはH1N1型だったことが分かっているが、これはブタのインフルエンザ由来の型と想像される。これらの経験から、今後のインフルエンザの大流行は、ヒトと動物との密接なコンタクトをする地域から発生するのではと考えられている。

(5)インフルエンザの警報フェース
2003年のSARSの大流行の際、感染が瞬く間に世界中に広がり、一国のみではこれら感染症の対策が難しいとの教訓から、世界保健機構(WHO)はインフルエンザの警報フェースを作成し、各国にフェースに応じた対策を策定することを呼びかけた。
フェース(以下、Pと表記。)3はヒト−ヒト感染であるが、血縁関係のある者同士など限定された感染の状態。P4は空気感染により夫婦や他人同士で感染が起こっている状態で、ヒト−ヒト感染が確実に起こっていると認められる状態。
P4からP6までどのくらいの速さで移行していくかは予測が難しい。また、国によって経済力、医療水準が異なり、対策が異なっているのが実情。

(6)新型インフルエンザ患者・死亡者の推移
新型インフルエンザは致死率が60%、発熱が100%、咳が70%以上、間接、筋肉が痛くなり、下痢・嘔吐を伴い、結膜炎を引き起こす。年齢別発生数を見ると、10歳〜30歳代の働き盛りの世代が多く感染。年別発生数では、2006年が最も多い半面、2007年、2008年と徐々に減少してきている。もっともこれのみをもって2009年に流行が収束すると言うことはできず、再び流行しだす可能性も高い。
罹患すると肺の中に炎症が一気に広がる特性があり、呼吸困難を併発する。入院すると呼吸器をつけ、かつ人工的に栄養補給を行うなど、集中治療室での高度な医療行為が必要となる。入院から死亡まで一週間と言われる。
(7)感染様式・予防
感染様式は飛沫感染と接触感染の二通り。
飛沫感染は、ヒトの咳は2メートル飛ぶと言われるが、ウイルスを含んだ水滴が咳とともに飛沫して感染するもの。よって感染を防ぐためには、感染者から2メートル以上の距離を置くのが重要である。
接触感染は、罹患しているヒトが汚染された手でドアノブを触り、そのノブを触った別のヒトが手を顔に持って行って感染。
感染を防ぐ方法としては、@咳をする時はマスクを付ける、ハンカチを口にあてるといった「咳エチケット」を実践、A手洗い、Bうがい、に尽きる。うがいは上を向いて「オー」と発声しながら行うのが、喉が最も効率的に洗浄される方法。人混みから帰ったらすぐに手洗い・うがいを実践すべし。
また、他人への感染を防ぐためには、自宅療養が有効。日本では風邪の際にも出勤するのが美徳とされるが、罹患者から他人にうつしてしまい、感染者数が飛躍的に増加してしまうため、感染防止の観点からは好ましくない。

(8) 新型インフルエンザの感染リスク
新型インフルエンザが流行した場合、感染リスクは@低リスク、A中リスク、B高リスクに3分類され、リスクに応じた防御方法を取ることとなる。
低リスクでは「サージカルマスク」の着用が有効。サージカルマスクは普段は医療機関で使用され、水分を通さない構造となっており、咳によるウイルスの飛沫を完全に防ぐことができる。着用の際は、上辺に指を当てて鼻に密着するようにワイヤーを変形させ、かつ蛇腹を伸ばして下辺であごを隠すようにする。捨てる時は中を触らないようにする。
中・高リスクの際は「N95マスク」を着用。N95マスクはウイルスを95%ブロックする規格で、息が苦しくなるくらいブロックされる。また、使い捨て手袋・エプロンを着用。手袋はアレルギー防止の観点から必ずラテックス・フリーを使用すること。手袋を外すときは、外の部分を直接触らないように内側を外に反転する要領で外すこと。捨てる際は医療廃棄物として処分する。簡易エプロンを着用する際は、袖の上から手袋をはめること。手袋・エプロンは一回ずつ使い捨てで使用。また、高リスクの際は防護服を着用。
いずれのリスクにおいても、手洗いは基本的だが重要。手洗いは10秒以上、「衛生手洗い」の方法で行うことをお勧め。

(9)消毒
家庭や職場の誰かが新型インフルエンザにかかり、嘔吐した場合には、塩素系の消毒薬で消毒するのが有効。希釈する時は換気を良くして行う。金属の容器は錆びるので使用を避ける。塩素系消毒薬がない時はアルコールでも良い。
家や職場で患者が療養した後、その場所を掃除する際は、ベッドのシーツや枕カバーは洗濯し、ドアノブ・電話の受話器・トイレのフラッシュノブなどは特に念入りに消毒する。窓を開けて換気を良くして行うこと。消毒・清掃に使用した器具は密封して医療用廃棄物として廃棄する。

(10)衛生用品の備蓄
体温計、サージカルマスク30枚(1日2枚、2週間使用を想定)、N95マスク20枚、使い捨て手袋、消毒用アルコール(塩素系漂白剤)などを用意すると良い。また、食料・水も2週間分用意しておくのが望ましい。

(11)日本政府・外務省の対策
日本国内で新型インフルエンザが大流行した場合、全人口の25%が感染し、入院患者数は最大で200万人、死亡者数は最大64万人、経済的被害は20兆円とも言われている。大流行に備え、日本政府は平成19年3月に「新型インフルエンザ対策ガイドライン」を策定。内閣に対策本部を設置し、ワクチンの備蓄や法整備などの対策を進めているところ。
外務省も緊急対策本部を設け、@邦人保護、A外国人渡航者の抑制(水際対策)、B国際貢献、の役割を担うこととなっており、特に在留邦人がパニックに陥らないよう、適時・適切な情報提供を行っていく。具体的には、フェース4直前の時期に「海外渡航情報」を通じて退避を含むお知らせを流したたり、民間機チャーター、政府専用機を海外に派遣して在外邦人を退避させるオペレーションを検討中。フェース4・5・6の段階では「現地の安全な場所に留まり、感染予防策を徹底してください」のお知らせを発出。この際、一番安全な場所は家庭(低リスク)となる。

(12)広州の新型インフルエンザ対策
広州では、発熱患者に対し、まずは地域の病院、クリニックなどの近くの発熱外来を受診。診断が確定した後は外国人向けの指定病院である、広東省人民病院、中山大学付属第3医院、広州医学院付属1院、広州市第8人民病院などで治療を行うことになると思われる。このうち特に重症例については、広州医学院呼吸疾病研究所で加療を行う。

(13)企業の対策
当地進出日系企業におかれても、新型インフルエンザの発生に備え、対策を整備しておくことが大事。インフルエンザのピーク時には40%の欠勤が予想され、発病者は解熱後7日目まで感染の可能性があり、2ヶ月の波が1年以上繰り返す可能性があるという基礎情報を念頭に、業務継続の最低必要部署と人員の算出、職員の感染予防の徹底、交代・補充要員の確保、代替意思決定システムの整備が必要。

(14)個人によるタミフルの準備
新型インフルエンザの大流行に備えて、個人でタミフルを準備しておくことをお勧めする。薬局では販売されていないため、医療機関で処方箋を書いてもらって購入する必要があるが、「自分で海外で治療するので必要」と言えば、半数程度の開業医は処方してくれるはず。保険の適用外となることに留意。中国の通関に関しては、持ち込みに関する規定は現在定められておらず、個人用量と説明すれば問題なく持ち込める模様。

(15)フェース4におけるタミフルの内服方法
家族や同僚が感染した場合や、大勢の患者を診察する医師、搬送する人等は、「予防内服」として、75mgを1日1回、7-10日間飲み続ける。
自分が感染した際の「治療」としては、75mgを1日2回朝夕、5日間飲み続ける。発熱してから48時間以内に飲み始めなければ効果が無いので注意。

2.質疑応答
(1)使い捨てエプロンを使用するタイミングは?
→汚物処理や感染者の搬送時に使用。

(2)広州で新型インフルエンザの大流行時、在留邦人にどのように情報が伝達されるのか?
→広州総領事館では、広東省衛生庁その他関連機関と連携して情報を入手することとしており、これらは領事館HPで速やかに提供する。広東省や広州市の衛生庁HPも参照願いたい。

(3)プレパンデミックワクチンを海外の邦人に希望制で接種する制度はあるか?
→プレパンデミックワクチンについては、現段階ではまだ臨床試験中であり、実用化に至っていない。

(4)タミフルには有効期限はあるか?
→箱に有効期限が記載されている。万一、箱に記載が無ければ、購入時に聞いて箱に書いておくと良い。なお、厚生労働省は先日、タミフルの有効期限を現在の期間から2年間延長することを決定した。

(5)治療技術・体制の充実面から、感染した際に香港に行って治療を受けたり、発生時に香港に退避して様子を見ることの有効性は?
→広州・深セン・香港を具体的に比較検討したことは無く、断言できない。しかし、深セン・香港間のイミグレーションには大量に人が押し寄せることが予想され、その際の感染リスクも考慮しなければならない。

(了)
        




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